人生のカラクリ1

スンヤニに帰ってきてから一週間たったある日。コーサからとんでもない命令がくだされた。

「今週末にサルコジ本人と最終リハーサルをアクラでやる。それまでにダンスを日舞とHiphopに分けて作り直して、自分たちのリハーサルをビデオにして持ってきて。最終リハの場所と時間?そんな話はビデオ持ってきてからだよ」

こいつは私たちがガーナ全土に散らばるボランティアだということを分かっているのか?
私はアクラまでバスで8時間もかかるスンヤニに住んでいるんだぞ?

あまりの無茶ぶりにブチ切れて同居人のナオミたちに散々グチりコーサと冷戦状態に陥るも、冷静に考えれば本番まで時間もないし、相手はなんてったって超多忙の人気アーティスト。今回の舞台はガーナ①立派なホールNational Theatreで行われる、年に一度様々な音楽部門の受賞が行われるGhana Music Awardsというとても大きな音楽祭。コーサはただでさえこの準備で忙しいのに、銀行の同僚が休暇に入る引き継ぎで死にかけている。

やれといわれたらやるしかない。

「わかったよ。みんなでアクラに集まってリハやるけど、
でもどう頑張ってもビデオ渡せるのは最終リハ前日だよ」

冷戦終結の雪解けにコーサの微笑が浮かんだ。
「love it babe, just go ahead」

みんなに事情を説明して日舞とHiphopにダンサーを分けて、エナジー達にダンス作り直してもらい、日程を調整してアクラに集合した。引っ越しの荷造りで漫画も食器もシーツもなくなったアクラのボランティア・ドミトリーに女子六人が集い、夜な夜な踊りの練習をしてビデオを作り上げた。
最終リハ前日。アクラで打ち合わせがあるからその前後に会おうと言ったコーサに会えたのは、最近できたアフリカ最速のVodafoneネットカフェで暇つぶし六時間の末クーラー病になりかけた夕暮れだった。

コーサに呼び出されたのは大統領官邸President Palace近くのAFRIKIKOというアフリカ有数の老舗レストランだった(Hiphopダンスを作ったアクラ在住ボランティア・エナジー情報。知ってるあたりが流石!)AFRIKIKOはMonsoon caféの屋外テラスのような開放的なエキゾチックレストラン。コーサはMusic Awardsの打ち合わせ中で、この後場所を変えて続きをやるという。急いでラップトップを立ち上げ彼のペンドライブにデータをコピーした。
<AFRIKIKOの一角にジェルネイルサロンを発見!
おそらくガーナで唯一。次回のお楽しみに♪>

日舞とHiphopのムービーに見入るコーサ「うん、いいね」
自分で確認した後、関係者と思われる女性にもデータを見せた。
「この打ち合わせが終わったらテマに帰って、サルコジやみんなにビデオを見せて話し合うよ。そしたら明日のリハの時間と場所を連絡するから」

仕事モードのコーサは移動しながら淡々と話した。そしてタクシーを捕まえる途中で言った。

「ねぇ、この間のショコールビーチでやったみたいなチャリティイベントの予定ない?今年は方針変えて、チャリティとかそういうのにガンガン出るつもりなんだ」

彼は国連ボランティア(UNV)が国際ボランティアデーに開催したビーチクリーニングの環境イベントのことを言っていた。サルコジはそこに歌いに来ていて、JOCVはUNVに協力して環境ワークショップを開き、私たちはそこで出会った。「チャリティイベントねぇ…」あそこまで大規模なチャリティイベントはなかなかない。一介のボランティアにそんな国際協力機関のスケジュールは知る由もない。
「うーん。今のところわかんないけど、なんかあったら伝えるね」
なんかあったらな~。このときは生返事で応えてタクシーに乗り込み、ドミトリーに送ってもらい別れた。

ドミトリーに帰った後も夜更けまでダンスの練習と撮影は続いた。翌ドミトリー引っ越し当日、朝六時から館内に響き渡る無線連絡にたたき起こされ、引っ越し業者の梱包作業を手伝い、ついにshokolaたちはドミトリーを追い出された。コーサの携帯電話はなぜか昨夜から電源が切られ音信不通。リハーサル当日なのに場所も時間もいまだ不明。

居場所のなくなった女子六人はとりあえずアクラ在住のエナジー宅に身を寄せ、ベリーダンス・ビデオを観賞したり(エナジーはHiphop, Reggae,だけでなくベリーダンスも踊る!)ピザを食べたりして過ごした。
だんだんイヤな予感がしてきた。このときにはもうイヤな予感どころではなく胃が痛かった。そもそもなんでコーサは何度聞いても最終リハーサルの時間も場所も教えてくれなかったのか。パイプ役のshokolaしかコーサの連絡先は知らないのに、一体この先どうなるのだろう。みんなに無理言って首都まで上がってきてもらったのに、ドタキャンなんてことになったらどうしよう。不安がどんどん大きくなる。

予感は的中した。やっと通じたコーサの声が暗かった。

「ごめん、ずっとモメてた出演契約の条件について、主催者側との交渉が折り合いつかなかった。今回ダンスは起用できないけど、サルコジやみんなにダンスを見せたらとても気に入っていたよ。また次の機会に必ずコラボしよう、とりあえずリハーサルはなし。」

頭が真っ白になった。やっぱり…あまりにも物事が不透明に進みすぎていた。そんなに都合よく全てがうまくいくわけない。プロのダンサーでもないのに、経験者を集めたとはいえ素人集団のボランティア達にNational Theatreなんて舞台が大きすぎた。しかもみんなが知ってるあのSarkodieの歌で。思考が停止する。なんだかとっても疲れた。やりきれなさと自分の居場所のあまりの居心地の悪さに、飛び出るようにエナジーの家を出てアクラを離れた。

夜行バスを待つ間また違うネットカフェに行ってみたけど、ワイヤレスに接続できず結局インターネットができなかった。仕方なく英語のレポートを書き始めるも、頭の中はここ最近起こった出来事をプレイバックしていた。

実は今回アクラに上がる前日、任地スンヤニで違う事件が起こっていた。アクラに来ることはダンスのリハーサルの他にも、もうひとつの意味を持っていた。アクラに呼ばれた、そう思うくらい必然を感じた。人生に節目っていくつかあると思う。無茶ぶりに等しい課題を同時に二つも与えられたと悟った瞬間「あ・仕組まれてる」と感じた。なんで今、このタイミングで同時に来るかな?絶対おかしいって。ありえない。偶然にしちゃ出来すぎてる。よく言うでしょ「現実は小説よりも奇なり」って。人生最大のチャンスと危機がいっぺんに押し寄せてきて、しかもそれはコインの裏と表のように気まぐれで、なにか大きな力に動かされている自分の運命を感じた。自分の意志すらも大いなる宇宙の一滴にすぎない。

自我を越えて"ヤラされてる"仕組まれた神様の試練、この人生のカラクリはいつになったら解けるのだろう。

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