アンスの夢の跡2


「お兄ちゃーん」
チラハウスの同居人・測量隊員まこっちゃんは、みんなに慕われる兄貴的存在。村落活動の石鹸作りでも色々調べてたくさんのアイデアをくれた、SHOKOLAの知恵袋&人生相談室。何より超優しい。料理もうまい。一体どんな嫁さんをもらうのだろう。日頃から色んなグチを聞いてもらい、Music Awards騒動もあーだこーだと悩みをこぼし、アンス事件の事の顛末を告げると「よくもまーそんなに次から次へと」と笑いながら一緒に考えてくれた。

「…免税だねぇ。個人で払う額にしちゃデカすぎる。ドイツ大使館とかGTZ(ドイツ技術協力公社)とかならなにか特別措置があると思うんだけど…これ個人で動いてるプロジェクトなんだよね?この人もバス持ってきちゃうなんてねぇ。で、どんなバスなん?」

アンスにもらった写真データを見せたら失笑された。
「ダメだよこれ、大型特殊バスじゃん。1000万円はくだらない。査定にも時間かかるだろうね~、なんでこの人こんなバス持ってきたかね?しかもこれ改装しなきゃ使えないじゃん。内装の工事に二カ月、500万円はかかるね。」
えー!!!建築技師のプロが言うのだから間違いない。アンスはもう二週間後には海の向こうだ。二日で終わらそうと計画してたよね?無理じゃん!どーすんのー!

とっておきの飛び道具。知り合いのツテをたどってお偉い専門家の方にご意見を伺ってくれた。ありがとう、お兄ちゃん。

「大使館は個人に対して動けないから、ガーナ政府機関か地元の伝統権威とか、そういった公の組織をかませることができたら免税措置が取れると思う。一番問題なのはバスの保管料。二か月も港に置いてたらバスの元値を上回って最悪廃棄だってさ。」

えーーー!!!!!絶句…廃棄って!いったいどーなっちゃうのこのバス!SHOKOLAの頭は大パニックである。や~、それにしても社会の仕組みのいいお勉強ですわ…税金ねぇ…物の行き交いにはお金が課せられるのだ。まこっちゃんはいつも優しくサラッと核心をつく。今回も寸分も違わず的を射た。

「例えばこの大型特殊バスをドイツで売ってそのお金をチラに寄付して、チラの人が欲しいものを買うとかさ。チラにはもう学校が溢れてるよね。スクールバスが本当に必要なのはオフロードの先にあるコミュニティだけど、このバスじゃそんなところまで入っていけない。この間チラの奥のコミュニティに活動でいったんだけどさ、結構ひどい道なんだよ。そーいうコミュニティにピックアップとかランドクルーザーを一台あげるとかね。」

そうなのだ。私達はチラに住んでいるから分かる。チラは地域の中心で、結構栄えている。本当に通学が大変なのは、例えば一時間半かけてチラの近くのエシアイエム学校に通うアフラス(SHOKOLAの石鹸作り活動拠点)の子供達だ。そういうところでは小さいうちは学校に通えないから、当然入学年齢が上がっていく。家の農作業を手伝うため、家計のため、親の学校教育意識が低いため、学年が上がるほどにどんどんドロップアウトしていく。

チラに住んで、周りのコミュニティで活動しているからこそ見えてしまう。本当の細かいニーズと、支援の下りてくる先の微妙な狂いが。外の世界からみたら同じガーナの村である。アフリカの、ちっぽけな田舎の村である。でもスンヤニ地区の幹線道路沿いにある人口15000人のチラと、未舗装道路の先の名もない集落とでは、そこ広がる世界には雲泥の差がある。私達はプロジェクト後の派遣隊員だからこそ余計に気になってしまうのだろうか。物やお金を落としたからって報われるってもんじゃない現実を、日々目の当たりにするからこそ。

だからってどうすればいいのか、誰か答えを知ってるわけでもない。アンスはチラハウスにちょっとした波紋を投じた。

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