夢の扉の向こう側3

「元銀行員なら分かるでしょ、銀行員が楽な仕事じゃないってこと。本当はやりたくないよ〜…でも生活してくためには仕方ないかな。(副業で)自分の会社立ち上げたのはイベント興行が一番得意なことだから。今までやって来た芸能プロダクションも続けるよ、でも将来的にはレコーデイングを請け負う音楽プロダクションとの複合メデイア会社にするつもり。イベントサイトも立ち上げてね。」
(注・ガーナでは副業が当たり前)

サルコジのマネージャーをしてたはずのコーサは、いつの間にかDuncwillsを辞めて自分の会社E JAMを立ち上げていた。い、いつの間に…てゆーか、サルコジ一番取ったばっかじゃん!何を血迷った、本当にいいんか、それで?
「サルコジはもう独り立ちしたからいいんだよ。マネージャーが営業しなくても好きな音楽を周りが持ってくるようになったから。」

あ、そう…そういうもんなの?よく分かんないけど…人の面倒ばっか見て、アンタ若いのにようやるね…本当にタメか?

「でもディ・クライムは絶対売れるよ。ラッパーとしてだけじゃなくR&B歌手としてもいけるし、ラジオのMCはもちろんTVタレントとして番組も持ってるし。マルチ・エンターテイナーとしてサルコジの上を行くよ」
彼がそういってDuncwillsから引き抜いた一押し新人歌手がDr.Crymeとゆー若者だった。
…誰? でも聞いたことある名前だな…そう思ってネットカフェの兄ちゃんに聞いてみた。

「こないだデータあげたじゃん、いつもサルコジと一緒に歌ってるテマのラッパーだよ」

エイ!探してみたら仕入れたYOU TUBEムービー埋もれていた。そしてそれを見て卒倒した。まだ十代かってゆーベビー・フェイスにハーフみたいな顔立ち、大きな瞳。くるくる表情を変えながら、きらきら歌う映像に釘付けになった。ヤバいぞ、この少年…
TWI POP歌ってんだ?チュイ語ってゆーアイデンティティを発信してるのが素敵☆あーでも何より超カワイイ…がんばれー!D-CRYME!!」同居人ナオミから黄色い歓声が飛ぶ。「この子、メッチャ楽しそうに歌いはんねん…そんでもって歌いながウチのこと見て微笑んでんねん…!」とはファンキー保健師カヨちゃんのお言葉。女子隊員の間で一気に流行りファンが増えた。

ひいき目なしに、ガーナはポップ音楽の質が高い。伊達にブラックミュージックを創りだした黒人奴隷の祖先を新大陸に送り出してないのだ、そのリズム感や厚みのある音楽は間違いなく本物だ(そのかわりロック音楽は全く入って来てない)。ガーナが特に強いのはHip-Hop(サルコジ率いるTEMA BOYZ)だが、アフリカ全土にポップカルチャーを配信するナイジェリアが誇るのは、ディスコ・クラブでガンガン踊れるDancehall Musicだ(P-SQUARE, WANDE COLE, BRACKET, etc)。

Dr.Crymeが打ち出すTWI POPはガーナではかなり新しい、アップテンポで明るいR&B音楽。隊員機関紙編集メンバーに入ったSHOKOLAは音楽特集を組み、この人気歌手にインタビューをした。
「日本のMANGA大好きだよ!NARUTOもブリーチも、友達にデータもらって全部持ってるよ!曲を創るのは想像するんだ、今飲んでるアルバロ(炭酸飲料水)も歌になるし、友達の恋愛話を勝手に歌っちゃったり。一番好きなこと?何よりも音楽が大好き!」

齢二十二の若者は、ガーナ人には珍しいアメリカ英語のアクセントで流暢に、気分が乗ってくると机をドラムのように叩きながら、そして歌うように喋った。きっと耳がいいんだな、それに感受性が豊かだ。
そしてコーサはE JAM初の音楽イベントを興行した。おおとりを務めたあの少年はガーナ音楽文化の発信源、テマに集う音楽馬鹿の若者観衆を前にその喜びを高らかに歌い上げ、Kill me shyMenewoa (You & I)を熱唱した。
ガーナ人なら誰でも知ってる人気歌手ばかりを集めた最高にド派手なクラブイベントX'POSURE PARTY、今年オンライン投票で西アフリカ一位に輝いたSimple(一番有名曲!)を歌った兄弟デユオBRADEZが幕を封切り、

コーサの高校時代の同級生R2BEES(カッコよかったー!)がナイジェリア歌手とのコラボ曲Kiss your handで観客を湧かせ、


ガーナHip-Hop界のキング
SARKODIEがR2BEESとのコラボGood Bye, Temaで会場を最高潮に盛り上げた。生のサルコジを見たのは去年のビーチクリーニング以来だった。

締めは去年の音楽大賞覇者KWAW KESEがアテンドして(大穴!超男前…)D-CRYMEにバトンタッチした。

いくつものコラボ企画が夢に終わり、「自分のアイデア実現するには、自分でやるのが一番」と悟った直後に打ち上げられた最大級の花火。

やっぱライブはいい!!!みんなが知ってる豪華歌手が、毎日ラジオで聞く流行曲を連発して!最高に楽しかった〜★でも何が一番強烈だったって、夢のような音楽イベント実現するのにたくさんの人を動員して、金策に奔走し、ボロボロになって走り回っていたコーサを隣で見ていて、最後の最後まで気が気じゃなかった…
夢を果たすってそーゆーこと?

「割に合わないよ、この仕事。全ての準備と苦労がこの一瞬で消えるんだから」
でもそーゆー世界に中毒になってる若い連中がうようよいて、そいつらがガーナ音楽をリードしているのだ。ガーナに限らず、音楽に限らず、こーゆー人間が世界中の文化の狭間でいつも何かを創りだし、人に感銘を与え、勇気を与え、最高に楽しく生きてるのかな。その半端ないエネルギーと意志の強さには心から敬服する。定められて生まれて来た人間っているんだな。まさにgiftedといったところか。いい人生勉強をさせられた。
日本にいる友人達を思い出した…コンパで知り合った起業家精神に溢れた面白い奴ら、クラブイベントを主催していたゼミの女友達、雑誌とか創って起業した青学のおしゃれボーイたち、音楽やってるメンズ達、ファッション・音楽・イベントに目がない、自信に溢れいつも輝いている親友達…気づけばSHOKOLAには、創造と文化に揉まれて最高に楽しんでる仲間がいた。

見果てぬ夢の扉の向こうには、意外に平坦な道が続いている。またいつもの現実に戻るのだ。あの最高の一瞬のために、壮絶な日々を暮らす。その夢を共有できれば文句はでないし、違ったならまた新たな道をとればいい。大丈夫、きっとまだ見ぬ未来が開けている。あなたの道はどちらでしょう、覚悟はできてますか?

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