アフリカン・ジプシーの恋人1+α

今日は、この会議のためにわざわざ夜行バスで早朝着いたのだ。
それが、一体なんだって、不思議なアトリエに誘われ、見たことないような人達と交わったのだ?

会議が終わり、ひさしぶりに再会したボランティア達と会話が弾む。
「どーだったよ?今日のデート?」ドミで朝会ったYAHAGIに聞かれた。
「ヤバいおかしかった」それが精一杯の回答だった。
明日からボランティアが全員集まって大規模な会議を開く。
人数があぶれてドミトリーに泊まれないSHOKOLA達は、ちょっと離れた繁華街のホテルに移動しようとしていた。
「ごめん疲れたから、今からホテル行って休むわ」
断りの電話を入れたはずが、なぜだか一人タクシーを捕まえ、気づけばパンジーの家の前いた。

学生時代から寝ないで夜通し遊び、キャンパスにたむろし、講義は代返し合って、雀荘で耐久勝負、西麻布のカラオケサロン、合コン、パーティ…破茶滅茶な生活を送っていた。ホテルに帰る前にちょっと寄り道するくらい、お茶の子さいさいだった。

さっき顔を合わせた若者の一人が門に居合わせた。赤い門を通され、外の螺旋階段を上がり、扉を開け中に入った。午後の温かい陽だまりはどこかへ消え、間接照明だけが暗闇に灯る屋内の雰囲気は一変していた。三時間前には居なかった若い男女がホールのソファに座り、ダベっていた。AYISOBAはもういなくなり、スタジオから奇声は消えていた。ホール、奥の部屋、皆思い思いの場所に座り込み、またある者は立ちながら、会話に花を咲かせていた。葉巻を回しチョコレートケーキを食べながら。白い煙が立ちこめ、あの甘苦い香りがあたりを満たす。

YAA PONOがソファに座っている。YAA PONOが、目の前にいる…
不思議な感覚だった。あれだけコーサに聞かされていたテマのラッパー話。それがなぜ、アクラの不思議なアトリエで、目の前のソファで、気怠そうに座っている?完全に方向感覚が麻痺した。
Tacitus, Mutombo, Yaa Pono
 さっきの若者はTacisusといい、お調子者で面白い兄ちゃんだった。
短いラスターで、やることなすこと、本当にウケる。炊事や洗濯を手伝っているようだった。ガ出身の彼は、ひどいブロークンなチュイ語を喋った彼はSHOKOLAの一眼レフをいたく気に入り、写真を撮りまくっていた。オッチョコチョイらしく、カメラを無造作に扱うと周りの皆が「ちゃんとSHOKOLAに返せ!」とたしなめた。

イカツイ兄ちゃんが一人居た。Mutomboと呼ばれ、
しっかりして頼り甲斐のありそうな人だった。彼は詩人だという。
「やってみる?」Mutumboに葉巻を差し出された。
は?タバコ? …じゃ、ないですよね… ごめんなさい!明日から大事な会議があるんです!間違ってもここでノタレ死ぬわけにはいかないんです!勘弁してください…!チュイ語で逃げれば逃げるほど執拗に追いかけられ、結局…ちょこっとだけ吸ってみた。でも元々スモーカーだからか?量が少なかったのか分かんないけど、全然ハイにならなかった。

葉巻が部屋中をぐるぐる回るなか、奥の部屋のさっきのマットレスに寝転ぶMiss Marleyちゃんを発見した。気怠そうに微笑み、とろ〜んとしていた。「こっちに来て座りなよ」言われてマットレスに座り込む。…大丈夫か? …大丈夫じゃない。可笑しそうに、ククッと笑いながら言った。「左手の感覚が…ない」「え!」びっくりしたSHOKOLAは思わずMarleyちゃんの左手を取った。「本当に分からないの?」「…うん」彼女は本当にに夢現を彷徨っていた。心配になったSHOKOLAは、Marleyちゃんの左手をずっと握っていた。

「あの女が持って来たガンジャ入りのチョコレートケーキを食べたらこうなっちゃった。…あれ、あの時いなかったっけ?会議で外に行ってたかな?」どこからともなく現れたワンラブ君が説明した。どうやら客人のひとりの若い女が作って、持ち込んだらしかった。そこにその女がケーキを一切れ持ってやって来た、足下が覚束無い。「食べる?」差し出されたケーキは、隣にいた知らない若い男が全部食べた。彼女は座り込んで葉巻を吸い始めたが、Marleyちゃんは見向きもしなかった。

「ちょっと出掛けてくる、すぐ戻るよ。その後ホテルまで送る。どうする?一緒に来る?」
なんだかよく分かんなかったがワンラブ君とMutomboMarleyちゃんが出掛けるという。
することもないし、着いて行った。

見慣れたDworuluからAirport Residential Areaを走り抜け、Shopping Mallを横目にSpintexまで来て道を見失った。ここはどこだろう?ポリスの警備が門番をする広大な敷地に入った。比較的大きな家がまばらに並び、建設中の家が目につく。高級新興住宅街といったところか?Airport Hillsと呼ばれるこの区域は、空港を見下ろす丘のような場所にあった。夜景に空港の明かりが浮かぶ。「金持ちが住むところだよ」運転しながらワンラブ君が答えた。Marleyちゃんのお姉さんらしき人物が電話越しに道を案内しているようだった。散々迷い辿り着いた一軒家から、小柄で華奢な女性が出てきた。ヘロヘロのMarleyちゃんをみて呆れたように呟いた。「アナタ達、一体何をしたの?」

全く帰ろうとしないMarleyちゃんに、お姉ちゃんは「お願いだから家に入って挨拶に来て」と懇願され、SHOKOLA達は中に通された。このときのワンラブ君の嫌がりようと言ったら!外付けした車が心配、シャイだから人に会うのが嫌だetc、相当粘ったが最後はお姉ちゃんに根負けした。…初対面の女性にセックスを語るオープンさはあるのに、知らない人に対してそこまで警戒する矛盾したギャップが面白かった。彼は相変わらず裸足に腰布を巻いていた。

通された家に入り、目を疑った。いや外観も相当に立派らしかったが暗くてよく分からなかった。通されたホールは壁も家具も真っ白で、高級そうなソファがずらりと並び、ふわふわのクッションやマットが散りばめられ、ホールの中央にはガラスの机が配置されていた。若い男の達が座り、つまんなそうに大型の薄型テレビを見ていた。カーテン、絨毯、全ての装飾が贅沢趣味な、ガーナ映画に出てくるセットのようだった。

Community Developerやって、毎日埃まみれになってバイクに跨がりコミュニティに通うSHOKOLA。不思議の国を通り越して、完全に場違いな空間に放り込まれたアリスは知覚障害を起こした。えっと… 私なんで、ここにいるんだっけ?

かったるそーーーな雰囲気の中、客人のワンラブ君とMutomboは若者達にいろいろと聞かれ、どーでもいいようなことを喋っていた。(多分)そうこうしてるうちに、怖そうなオジさんと迫力のあるオバさんが帰って来た。無言で奥の部屋に消え、そしてホールに戻って来た。…外から帰って来て顔を見せたら、とりあえず挨拶だろ?田舎の伝統とは明らかに違う世界に行きてる人達、やはり何もかも別世界だった。

彼らと少し喋って、私達は屋敷を後にした。オバさんはベレクム出身だという。スンヤニのお隣さん、完全なボノ族の地、KOJO ANTWIの最終ライブ地。Marleyちゃんは家には帰らず、一緒に付いて来た。

パンジーのアトリエに帰ってくると、ホールに人がまばらだ。Mutomboと奥の部屋をのぞくと、みんな横になってたり踞ったりしてるようだったが、明かりもない暗がりでよく分からなかった。明らかにおかしい雰囲気だった。

「みんな中華レストランにいるっていうから、私もう行くわ」
またワンラブ君の運転で、MutomboMarleyちゃんの四人で車に乗り込んだ。
Mutomboとワンラブ君は仲がいいらしい。
ふたりでずーっと楽しそうに喋り、歌い、車中を賑わせた。
shashee wowoo♬」
彼らはStay-Jの曲をずっと歌っていた。Stay-Jは11月までコーサのE JAMにいたが他のマネージャーの元へ移り、来週テマで行う自分のイベントを控えていた。今はもうコーサの元に居ないStay-Jの曲を、アクラのレゲエ歌手さんと変テコなアトリエに出入りしてる詩人の兄さんが歌っている。 …切なかった。人なつこいStay-Jの笑顔が浮かんだ。先月Richardが主催した大規模なテマの屋外イベントで、彼はこの曲で観客を沸かせていた。

Miss Marleyを乗せて、隣にMutomboが居て、
African GypsyOSUを走ってる♬ 
右に曲がり、左に折れて、SHOKOLAを送りに♬ 
SHOKOLA LALA~ 
Sunyani Ninja! Yaa Ninja! Sunyani Ninja! Yaa Ninja!

レゲエ歌手さんは、可愛いラッパーだった。
Mutomboがリズムを取って車を太鼓のように叩く。
不思議な夜のドライブだった。

レストランに着いて、荷物を下ろす。
ワンラブ君はやっぱりシャイで、「みんな日本人?チュイ語喋る?」さっきまで興味津々だったくせに、「中には入りたくない…」そういってAfiaだけを外に呼び出し、ちょびっと挨拶した。長身のラスターである。「変わった友達ができたね〜」小柄なAfiaは笑いながら呟いた。

何もかもが変すぎた一日だったので、考えるのを辞めた。
ひさしぶりに会う同期隊員と会話が弾む。みんな元気そうだった。
日本に帰ったらどうする?あと三ヶ月で帰国である、みんなあれこれ考える。寿司が食べたい、温泉に入りたい、結活!プレ活!ガールズトークは永遠に止まらない。
(でもSHOKOLAは美容院に行きたい!)

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