アフリカン・ジプシーの恋人2+α

FACEBOOKを立ち上げる度に、TACITUSからチャットが入る。
「元気?今どこ?アトリエ来なよ、写真データちょーだい!」
うん みんなウェルカムで、とっても嬉しかったけど、
ワンラブ本人に呼ばれてないのに行っていいものか?
誘われる度に困った だってー!
他の彼女と鉢合わせってこともあるかもしれないし!

それにしても皆とても快く受け入れてくれた。突然現れた謎のアジア人女性が、毎日のようにアトリエに出入りし、奇妙なことこの上ないのに、皆とても普通だった。パンジーの空間は、とっても自由で、何より温かで、優しかった。

TEMAで仲間うちで色々あって軽く人間不信になっていたSHOKOLAには、人に無条件で受け入れてもらえるとゆー何気ないことが、極上のものに思えた。

「スンヤニに帰る。じゃね!」
ワンラブは自分のCDYAA PONOCDを手土産にくれた。

結局用事ができてアクラ滞在を伸ばし、同期ボランティアのENERGYに会った。彼女こそがKWAME YEBOAHNANA YAA達と引き合わせてくれた本人だった。彼らの演奏を見にJAZZ BAR +233へ足を運んだ。

散々お世話になった皆に再会し、マネージャーさんらしき女性に挨拶した。ENEGRY宅に着いたのは明け方三時頃だった。ふたりとも泥のように眠り、朝はENERGYの手作りご飯を頂いた。ブルキナ旅行の思い出話を聞いて写真鑑賞をした後、お互いの近況報告に入った。

「ワンラブ・ザ・クボローって知ってる?」
「うん、先月ライブで見たよ。超良かったよーーー」
えええええ!!!ビックリである!!
確かにENERGYが好きそうなジャンルの音楽ではあったが、ドンピシャだったとは!しかも彼女の友達のドラマーSUNDAYとワンラブはバンド仲間でデンマークやアメリカに演奏旅行していたことが発覚した。あまりの偶然に二人で開いた口が塞がらなかった。
copyright/p.a.s.s. wanlov the kubolor & his band

日本でHiphopダンスからレゲエから色々やってたENERGY。
音楽や文化に造詣の深い彼女はいろいろと教えてくれた。
「レゲエって何?」
「音楽っていうよりはひとつの文化、考え方かな…自然を愛し、自由を掲げて、社会への反抗を謳う。ジャマイカが発祥よ。精神世界に通じることで芸術や創作に繋がるから、ガンジャとは縁が深いわ。」
「ほー…そうなの… でも多分ワンラブはガンジャやってないな…いつもぶっ飛んでるけど」
「そう、珍しいわね」
BOB MARLEYの娘に会ったっぽいんだけど。
パトワ語喋るってゆーんだけど、本物かな?」
「うっそ、マジ?!奥さんの一人はリタ・マーリーっていってガーナ人よ。パトワはジャマイカの言葉で、BOB MARLEYの曲でも歌われてるわ」
「うっわ、じゃー本物だ!たぶん」
「その子今何してるの?」
「アカウンタントの専門学校に通ってるって。」
「勿体ないわねー、才能。音楽とか何かやればいいのに」

ENERGYは、次から次へとSHOKOLAの疑問を解決してくれた。
「ラスターって何?ワンラブ、自分はラスターじゃない、どの宗教にも属さないって言うんだけど。」
BOB MARLEYがラスタファリアン信仰だったからあの髪型がラスターっていう共通語になったけど、アレ、ほんとうはエジプトの王様の名前なのよ。ラスタファリーって王様がいて、その人のことを信仰する宗教なの。ジャマイカ発祥で、人類は皆アフリカのエチオピアの地に回帰するっていうね」
「お母さんルーマニア人で、自分はアフリカン・ジプシーだって言ってる」
「おーっと…ロマROMAかー。今も迫害され続けている、ヨーロッパの少数民族よ。定住しないで独特の音楽や踊りの文化を持つの。論文テーマにしようと思ったくらいハマったわ、彼らの考え方に。」
アボリジニーやネイティブ・アメリカンの友達がいて、彼らの文化保護に積極的なENERGYのドつぼを突いた。

「ワンラブの曲あるわよ」
そういってアルバムGREEN CARDをかけてくれた。
ワンラブが別れ間際にくれたCDだった。
ジャケットがまたSHOKOLA好みの右脳炸裂シャガール系で可愛かった。
でもまだ封を開けてなかったし、聞いてもなかった。
数字は全てピジョン英語のルビが振ってあって、
彼の曲はおもしろいタイトルが付けられていた。

GREEN CARDって曲は“みんなグリーンカードを求めて争ってるのに、結局それを持ってもコミュニティに入る事が出来ない”っていう暗示の曲。KOKONSAはチュイ語でゴシップの意味。噂好きなガーナ人をなぞらえて、子供みたくココンサ、ココンサって歌ってる。CHINSEKOKONTE (ガーナ食)を食べるのか?って歌もおもしろいわ。でもライブの時、一番よかったのはこの曲HUMAN BEING。色んな国の名称が出てくるの、それを観衆にマイクを向けて歌わせるんだけど、あまりにもたくさんの国名が出てくるから最後の方はみんなどの国かわかんなくて、会場中が大笑い。それにしてもあのピュアウォーター・バッグをずーっと斜めがけして歌ってるの、おもしろかったわー!あの中に何が入ってるか見たいって、みんなでずーっと喋ってたの!この時、ステージにKING AYISOBAもいたわ」
copyright/king ayisoba
「あ、その人スタジオに居たかも。奇声上げる人?」
「えー!AYISOBAいたの?彼、北の出身で伝統音楽をやる人よ。
彼も凄くいいわよー、好きだわ」
ENERGYはやっぱりSHOKOLAの人生のメッセンジャーで、いつも助けてくれる。とてもスピリチュアルで不思議なお姉さんだった。

人生って不思議だなぁ。
今ここに出てきたむさぴょんとENERGY、そしてスンヤニのシスター・ナオミ。みーんなボランティア訓練時代の英語クラスの仲間である。彼らはいつも、SHOKOLAとどこかで繋がっていて、どこかで助けてくれる。

「今日こそ本当にスンヤニ帰ります。じゃね!」
ドミトリーを出る直前に電話で挨拶をした。
「えー!ちょっと寄って来なよ、パンジのところに」
そういって、Legonにあるスタジオで自分のバンドと音作りをしている
ワンラブの電話は切れた。

「あ!SHOKOLA!」
アトリエをのぞくと、TACITUSYAA PONOJOE BLACKと、
いつものメンバーがくつろいでいた。
Hi♥」
奥の部屋にはパンジーが座っていた。
コトヌー出張から帰って来たところだった。
「おかえりなさい♬」
SHOKOLA!ただいま♥」
すっかり馴染みとなったこの空間でくつろいでいると、
ワンラブ君が帰って来た。
「Hi Shokola...everything is alright? cool?」
kiss & hugの後、彼は落ち着かない様子でスタジオやホールを行ったり来たりしていた。今日作ってきた音源を聞いたり、かと思ったら筋トレを始めたり。いつも身につけている紐付きの丸いマラカスを振って、曲を口ずさみ、詩の続きを書いたりしていた。
何度も何度も同じ音を繰り返しPCで聞き流して、音を切ったり張ったりして地道に曲を作っているようだった。…素人には何をしてるんだかさっぱり分からず、隣で聞いてたSHOKOLAはまぶたが重いことこの上なかった。

「ピュアウォーターの鞄の中!何が入ってるの?友達が知りたいって」
ちょと訝しそうな顔をして、素っ気なく返した。
「他の人が見るならお金取るよ」
チラっとのぞくと、あの丸いマラカスが入ってるのが見えた。
「今日歌ってるときに、割れちゃったんだよね」
ふーん。大したものは入ってなさそうだった。

もう出発しようかって時間になって突然「今日は頭を洗う」と言い出した。
結局、一時間程シャワールームにこもり、彼のながーく伸びたラスターを
わしゃわしゃーと洗うのを手伝った。
「このラスター、切らないで伸ばしたらKOJO ANTWIみたいにながーくなるの?」
「僕はラスタファリアンじゃないよ。髪もたまに切ってるし。」
じゃーこの長い髪はなんて呼べばいいんだ…
フランスのマルセーユで買ってきたという石鹸は、肌に優しくいい香りがした。一生懸命わしゃわしゃ洗ってブルっと水を切る仕草は、まるで大型犬のようだった。
「髪の毛、本当に毎日洗ってるの?」
アジア人が美しい直毛を毎日洗うのは、
縮れ毛のアフリカ人には想像つかないようだった。
そりゃーそーだろーなー、一時間もかかったら…

布を頭に巻くと、ロマ系の血が入る顔の顔立ちは、まるでアラブの王様のようだった。シャワールームから出ると、見知らぬ若いアーティストが居た。ワンラブは彼らの収録を仕切っていた。

「私もう帰るよ」今度こそ本当に時間がない。
「ちょっとまって、あと少し」そう言って皆に指示を出し、彼は見送りに来てくれた。

Baby~♥ 気をつけるんだよ、次はいつ来るんだい?待ってるよ♥」
そういってパンジーは熱〜い抱擁と、チュッと優しいキスをくれた。
「じゃね!みんな、元気でね!」
ピジョン・スタジオのみんなは、最後まで温かく迎え入れ、送り出してくれた。

「次、アクラ来るのいつ?…CDもった?DVDもった?」
GREEN CARDはこの間もらったし。COZ OV MONIは最初にくれたじゃん。
TACITUSが捕まえてくれたタクシーに乗り込んだ。
ワンラブはとても感情表現が素直で、最後まで名残惜しそうに見送ってくれた。
自他共に認めるWOMANIZERではあるが、情熱的で、理想的な恋人だった。

こうして、かなりぶっ飛んだ不思議の国にワケも分からず振り落とされたアリスは、
無事家路へと着いたのだった。何よりもピジョンの皆があまりにも温かくて、
傷心だったアリスはバスの窓際でひっそりと泣いた。

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