アフリカン・ジプシーの恋人2

翌日は、朝早くからガーナ大学の野口英世メモリアルに集まった。
二年間で最後の総会、感慨深い。
ガーナ服や編み込んだ髪が、日焼けした肌によく似合う。
皆思い思いにガーナライフを満喫していた。
久しぶりに会う同期のボランティアや仲間との話が、
盛り上がらないワケがない。

丸一日の会議で、ホテルに着く頃には日が暮れていた。
部屋で無線ワイヤレスに接続すると、TWITTERでワンラブ君と
Mutomboからアランサの写真が送られていた。
「アラサ?それともアランサ?」
「アランサだってば!」
HAHAHA! 今度食べさせて〜」

仲の良いボランティア達とホテル近くの繁華街でお寿司を堪能する。
なんてったってこんな贅沢、アクラでしか出来ませんから☆
そしてなんと言ってもGirls Talk Never Stopでございます★
活動から現地ライフ諸々、しこたま飲んでしこたま語った。

「今晩スタジオ来れないの?みんな待ってるよ」
会話が弾む寿司屋を一足お先に抜け出し、タクシーを捕まえパンジーの家に向かった。TacitusYaa Ponoがいて、Joe Blackという若いアーティストが座っていた。アトリエは平静を取り戻していた。あのおかしな空気はどこかへ消えていた。
スタジオにこもるYAA PONO
洋服デザイナーのANTSUは、画家でもある。
パンジーのホールに描かれた偉人達は彼の作品。
誰も居なくなったスタジオでPCの電源を立ち上げ、
ワンラブ君が自分の映画COZ OV MONIを流し始めた。
「ラップのミュージカルだから、撮影するのが大変だったよ。
ずっと歌ってずっと踊って。」
人物が浮き上がるように処理された映像は、食べ物や血の赤が鮮やかに浮き上がり、とても生々しく、そして美しかった。
「今のSaminiだよ、あっちはMacho RapperMacho Rapperのアクション映画も考えてるんだ、彼の名前を命名したのは僕なんだよ」
え! TEMAのラッパーを命名したんですか… 
ア、アンタ一体何モン…???

映画の主人公の膝の上で鑑賞し、解説までしてもらったが、全く持って実感が湧かなかった。申し訳ないことにTEMAHiphopしか聞いてない私は、他のジャンルのガーナ音楽については全くの無知だった。
「ふーん」
おかしな事が続きすぎて、昨日から感覚が麻痺している。
なんだって私はこんなアトリエに居て、レゲエ歌手さんとイチャついてる?
この日、Miss Marleyちゃんは居なかった。
SHOKOLAはアフリカン・ジプシーの恋人リストに名を連ねた。

何をしても自由なこのアトリエには色んな人が出入りしていた。
どこでも座るし、どこでも寝れる。
何を食べても、飲んでもいい。
いつでも楽器を鳴らしてラップを刻み、気分が乗ればスタジオにこもる。
どこでもキスして、セックスできる、不思議な空間だった。
翌朝気づくと、見知らぬ女性が二人いた。
一人はボストンからの旅行者で、開発学を専攻しているという。
西アフリカは初めてらしかった。
コミュニティでの活動や開発プロジェクトについて語り合った。

朝ご飯を買いに行くと、アランサが売っていた。
やっぱりスンヤニでは見たことのない、南部のフルーツだった。
種のまわりの実は甘かったが、皮の近くの実はえぐかった。

螺旋階段を上る前に、庭を覘いてみた。よく手入れされたお庭は、木や植木鉢が不思議な感覚で配置されていた。草木は元気よく生き生きと伸び、かわいい花が咲き乱れていた。宙づりにデザインされた鉢に張った根は、慣れ親しんだ、見覚えのあるものだった。それは父が生前愛した蘭のものだった。

蘭は育てるのが難しい。父は蘭専用の温室を持っていて、元気のなくなった蘭を人から預かりお医者さんさながら見事にお世話していた。いろんな蘭や南国の草木が植わり、美しい極楽鳥の姿もあった。

アトリエに上がり、ホールにある雑誌にふと目が止まった。
High VIBES Festival
フランス大使館が出資する、西アフリカ最大の音楽イベント。西アフリカ代表の様々な音楽ジャンル…Hiplife, Acoustic, Francophone, Jazz, Afrobeat…を網羅する音楽祭典。同期ボランティアのむさぴょんが大好きで、二年連続で行っていた。写真撮るのがうまくて、Macユーザーで、センスのいい音楽をたくさん持ってるむさぴょん。アフロビートの創始者、明確な社会的メッセージをうたう政治家でもあったナイジェリア最大の音楽家Fela Kutiが好きで、その特集記事を隊員機関紙に書いていた。

一ページ目をめくった裏表紙の文字に目を疑った。

PANJI ANOFF
Pidgen Music / Creative Director

ラブリーな口ひげダンディは、なんとHigh VIBESの総合監督だった。

午後からの会議に出かけ際、Tシャツをもらった。
凝ったデザインのそのシャツは全て手作りで、女性用は一点ものだという。
い、いいの?ホントに?
後ろにはロゴが二つ入っていた。

YAA PONO
Pidgen Music


テマで姿を見なくなったのは、パンジー率いるピジョン・ミュージックに引き抜かれ、アクラを拠点に移したからだった。

その週末PARTYに誘われた。
よく分からずついていくと、どこかの家の屋上を貸し切ったプライベートパーティだった。あの面白い詩人さん、Mutomboも来ていた。ワンラブ君の友達のKWABENA DANSOは、アーティストでありながら合気道や空手をやるという。ワイルドな出で立ちで、武士っぽかった。
JapaneseといえばPeace Signだよね!
KWABENAが言い出した
KWABENAはオランダ人ハーフのAMAという彼女を連れていた。
明るく気さくな人で、知り合いのいないSHOKOLAを気遣ってくれた。
後でFACEBOOKを通じて繋がったら、同い年のモデルさんだった。

知り合いがいない者どうし、AMAが連れていたオブロニ友達と話し始めるとガールズトークに花が咲いた。
でもワンラブ君は他の女性の相手をしていて、
連れのいないSHOKOLAはつまんなすぎて先に帰ろうと思った。

そこに見た事のある恰幅の良い女性が目の前を横切った。
世界的に活躍するガーナの歌姫YASMEENである!
先月イベントであなたのこと見ました!ファンです♥
なんだこのパーティ。音楽関係者のオフ会か?

隣のガーナ人男性が話してかけて来た。
「彼女はワイフなんだ、本当に素晴らしい女性だよ。心から誇りに思う。」
うん?!なぜ唐突に私に話しかける、YASMEENの旦那様?!


Hi Panji♥」友達と飲んでるパンジーに挨拶すると、
Wat sup Baby♥」といって優しくハグしてくれた。
「喉が渇いた」というと、ウォッカの水割りを作ってタバコをくれた。
いつでも優しくWelcomeなパンジー…これだからオジサマは好きである!


戻って来たワンラブは不機嫌そうな顔つきをしていた。
「今日は一日すごい大変だった。パンジーも僕も凄い疲れた。」
よしよし、何があったかは知らんが、働く男は疲れるもんだ。
肩を揉んであげると、クタっと気持ちよさそうにした。
アスリートのような柔らかい、良い筋肉をしていた。
東洋の娘が屋上の欄干に腰掛け、なにやら怪しげな術を長髪ラスターのレゲエ歌手さんに施す姿…いやー、笑えるでしょう!みんな不思議そうに眺めていた。

ワンラブが連れの女性を送っている間、パンジーが呼んだ。
パンジーの膝の上に乗って話していると、
「今の、SHIATUってヤツ?」と訊いてきた。
なんで知ってる!東洋医学!さっすが謎のオジサマ、造詣が深い!
「うん、そうよ♥」
そういってパンジーにマッサージすると、ソフトマッチョのパンジーの肩はコリコリで、仕舞いには全体重をのっけて手根を使ってほぐしていた。
お調子者のTACITUSは、
この日もSHOKOLAの一眼レフを手放さなかった
眠りこけたパンジーを皆不思議そうに見守り、私達はパーティの一番最後まで残っていた。
おいしいタイカレーが出て来て、賄い食のように皆がっついた。主催者の女性はこれまた恰幅のいいおばさんで、いいオーラが出ていた。KWABENAAMAを見送り、パンジーとワンラブとTACITUSと四人でピックアップ車の荷台に乗り込んだ。

夜風が気持ちいい。明け方四時の空はまだ暗かった。
SHOKOLA達を交差点で下ろすと、ピックアップ車はどこかへ消えた。
通りを歩き家に辿り着いた時、門の前でパンジーとワンラブが何か話し込む。
パンジーは門をくぐらず通りの向こうへ消えて行った。

長い長い夜が終わって、アトリエに帰り着き、みな床に転がった。
思い思いの場所で。

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