To my motherland JPN

3月11日金曜日
SHOKOLAとシスターナオミは任地スンヤニを引き上げ、首都アクラに向かった。
明け方まで荷物のパッキングに追われ、同居人ノリくんに手伝ってもらい残す荷物を引き継いで(BIG THX!!!)早朝自宅に呼んだタクシーにスーツケースとチャイナバッグ達を詰め込み、国営大型バスステーションに向かった。

乗客が満員になってから発車する通常の運行と違って、この長距離国営バスSTCは定時運行するのだが、この日は珍しく30分ほど出発が遅れた。こんなことは本当に珍しく、7時に到着しなければ時間きっかりに出発するバスに乗り遅れることが常だった。

クマシを過ぎたあたりでガーナ人からの電話が相次いだ。

「今どこ?ガーナ?日本?今日本がTSUNAMIで大変なことになってるってニュース見たよ。SORRY WAI」

英語のSORRYは非常に便利な言葉で、この文脈では人の不幸に対し「お悔やみ申し上げます」の意になる。

支給された携帯電話は古い型番でインターネット機能なんてついてない。
たとえノートパソコンを開こうとも、無線ランなんて飛んでるはずもない。
てゆーかこんな公共の交通機関でノートパソコンなんて開いていられない。

日本で何が起きているかいち早く伝えてくれるのは、
民間や政府のいい仕事についてるガーナ人だった。

一体何事だ?ワケが分からなかった。

もう二度とボランティアとして往復することのない、アクラ行きの長距離バスの車窓をシスターナオミと感慨深く眺めながら、遠く遥か海の彼方の母国、日本で一体何が起きたのだろうとぼんやり思った。

この日は渋滞がひどく、いつもなら8時間ほどの道を10時間かけてスンヤニからアクラに辿り着いた。夕方五時を回っていた。
荷物をアホ程抱えるオブロニを格好の餌食とするアクラのタクシードライバーと格闘しながら、はうはうのていでドミトリーに辿り着くと、いつもの仲間達がいた。
「ねぇ、一体日本で何が起こってるの?ガーナ人から電話が入ったんだけど」
「東北で地震が起きて、大変なことになってるよ」
彼はインターネットを繋いでYOU TUBEの映像を見せてくれた。
あまりのグロさに言葉を失った。
それはまるでCG処理された映画のようだった。
9.11のような非現実的な現実の映像の残酷さに、足場が揺らいだ。
今生きている現実世界に酔った。

「荷物なんて置いて、早くおいでよ」
というダーリンの待つスタジオに向かうと、オールスターさながら知ったメンツが雁首揃えて出迎えてくれた。彼が説得してくれなければダーリンと一生顔を会わすことなく帰国しただろう、というほどの恩人にしてダーリンの大親友、ムトンボに開口一番言った。
「E! JPN! ADEN! TSUNAMI!」(Oh Japan! Why Tsunami!)
彼は最新の携帯電話で地震の被害状況を調べ、ツイッターで呟きまくっていた。みなSHOKOLAをとても心配してくれた。
「なんで今帰らなきゃいけないのさ!ガーナに留まったほうが安全だよ!」
正確には「お前の国は海に沈んでしまったからもうないよ!帰るなよ!」と言われたのだが、悲しみをかくして何事も明るく振る舞う冗談好きのガーナ人の文化を配慮すると上記のようなニュアンスになる。決して不謹慎な意味合いで言ったのではない。

翌日、人生最大の自分のコンサートを控えていたダーリンはとてもナーバスに入っていた。

ムトンボの車に乗る時は、いつもダーリンが運転する。
明日お披露目するアルバム曲を大音量で流し、私達はビートを刻みながら熱唱した。

どんな音楽ジャンルにも文化にも縛られないアフリカンジプシーと、半日以上かけて首都と地方を行き来する東洋からやってきたジャパニーズジプシーは、夜のアクラを駆け抜けた。

翌朝、ルーマニア人のダーリンのママが朝食を用意してくれた。
「前回は何のおもてなしも出来ずにごめんなさいね、今日も食材があまり揃ってなくって…」
そういって出て来たパンの付け合わせのこんがりしたソーセージとチーズとピクルスは、SHOKOLAにとっては最高に豪華な朝食で、ケニアの出張で買って来たというコーヒーはとても深い味わいがした。

「ゆっくりと座って」
マダムはリビングのホールの籐のソファに朝食を用意してくれると、壁にかけられた薄型テレビの電源を入れてニュース番組を探し始めてくれた。間もなくCNNが、NHKの映像を流しているのにヒットした。

大洪水のように家屋や車を流しさる津波、荒れ果てた田畑、避難所のお年寄りや子供達、崩壊した橋や建物。

現実に目を疑い、涙が溢れて来た。

コメント

谷口真吾 さんの投稿…
shokola、日本は大丈夫だ。

ガーナは素敵、ありがとう。
Unknown さんの投稿…
こちらこそ、ありがとうございます

被災にあわれた皆様には心よりお悔やみ申し上げます
日本の家族は無事でした
友人は日々をたくましく頑張っている様子がfacebookやtwitterから伝わります

皆、落ち着いたら是非お会いしましょうね

NPO法人JOCA(協力隊を支える会)でもJICAより要請を受けて緊急支援ボランティアを急募しており、shokolaも微力ながら何か出来る事があればと思い登録しました。外国からの支援の通訳や支援物資の運営スタッフなどのお手伝いと伺っています。

未曾有の難局に直面し、新たな風が日本社会に吹き込まれることを実感されている方も多いのではないでしょうか。

吹きすさぶ寒風は本当に身にこたえます。が、
最低限の水と電気と食料さえあれば、
心通うわずかな友人と温かな家族がいれば、
人は幸せに生きられます。

心穏やかな時もあれば、筆舌しに尽くしがたい絶望に打ちひしがれる時もあるのが人の世。
半世紀前と此の度と、二度も被爆した国が他にあるのでしょうか
日本は何か特別な使命を負わされているような気がしてなりません

運命と呼ぶには余りにも惨い現実ではありますが、
消費大国の日本は節電や節水、省エネをここまで実践し、混乱もなく皆一致団結する様子は間違いなく世界に大きな問いと影響を投げかけています。

日本は社会規範と倫理が整った、類い稀なる可能性を持った国です
実力を発揮しきれない今までの政治や経済の現状を嘆く諸外国も、復興を期待する声が上がっています

全ての次元に置いて世界が転成の時期にあるのだと色々な方面で聞いていましたが、今がまさにその時期なのだと教えられました。この一年を乗り切った来年あたり、私達は、この国は、この星は、どのような様相でいるのでしょうか。

皆様、共に頑張りましょう

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