ただいま、お父さん!


あるサイトを発見し、その弾みで書き上げてしまった
勢いって恐ろしい!

なぜか取り憑かれたように書き上げてしまった手紙。
別に後悔する想いや言い残した言葉なんてないけど、
七回忌を迎えるだけの年月は流れていて
800字の制限、気づけば3800字を超えていた
(どんだけ!)
そりゃそうだ、私の人生はネタの宝庫。
大学三年で止まってる父との会話、
大人になればなるほど親の目線に近づく訳で、
経験を重ねれば共通の話題も増える訳で。

大学時代に男友達と明け暮れた麻雀を仕込んだのはあなたで、
本と漫画が大好きなこの体質はあなた譲りで、
旅行が好きなのも、好奇心が旺盛なのも、凝り性なのも、
クラシック音楽を刷り込んだのも、
全部あなたの遺伝子で。

私が自慢したかったのは、
銀行時代の華やかな丸の内OLライフと、
ダイナミックな金融市場を操るディーリングルームの裏話と、
優秀な外債投資チームの一員だったことと、
銀座プランタンの屋上のゴルフスクールに通ったこと。

今、報告するのは、
ガーナから無事に帰って来たこと、
バイクで事故ったし食中毒で入院もしてビデオもカメラも盗まれたけど
(あれ?もしや、ちょっと悲惨?)
二年間、安全で健康に楽しく過ごしたこと
褐色に焼けた肌
美しく編み込んだ髪
相当腕を上げたチュイ語とガーナ英語
異文化と多様性に揉まれたこと
いつでも迎え入れてくれる温かいガーナの母を何人も持つこと
子供達の輝く瞳
笑い声
庭のマンゴーとカカオとアボガド
植林のための畑仕事
ベンチで休む昼下がり
道端で食べるビニール袋のご飯
フフの前に飲むウォッカ
ココナッツジュースとその中の実
猥雑なタクシーステーション
夜の街の喧噪
ネットカフェの速度の遅さ
何よりも恋しいのはうだるような暑さ
手足の皮膚が悲鳴をあげる乾燥
弾力のある黒く輝く肌
艶やかなロングドレス
頭の上の商売道具とお尻に乗せる乳飲み子
歯の抜けたオヤジの笑顔
餞別にもらったホロホロ鳥の卵
同居人がくれた素敵なカード
ナオミとの日々
音楽家達とのありえない物語
日本に持って帰って来た、石鹸たち
ガーナで出会った、美しく咲き誇る蘭の庭

別にしみったれた涙涙の物語を書く気なんて更々ないけど、
こうして書き出すと意外と話は尽きず、
そりゃぁ人生ネタですけど、
私はファザコンか?
父に報告したいから書いているのか、
自分の想いから筆が走るのか、どっちが先だか分からなくなってきた。
なんだか気持ち悪いけど私達兄妹は本当に父の遺伝子をよく受け継いでいて
そうやってふと思い出しては家族で笑い合うのがささやかな幸せであり
二年間家を不在にした私に出来る最大の孝行は、
そういう時間や想いを共有することなのかもしれない。

そうですね、あなたへの報告はこうして一生続くのでしょう

あー、でも本当にお酒を飲みながら話したかったのは、
東京の歴史と地理!
銀座のあの飲み屋はどこの路地にある、
原宿は昔は何もなかった、
西麻布のあの道はどこに通じてる、
八重洲と丸の内の連絡口、
今ならよく分かるのにー!

言葉に出来ない思いがあるから、
人は音楽や絵や、いろいろな芸術で表現するのだと
私は思う

頭の中にはこびりついて離れない景色や想いがまだまだたくさんあって、
それをどうにか表現したいのだけど
こういったエッセイのようにすらすらとは進まず
でもそういった、ひとつひとつ積み上げて行く緻密な作業は
思いもよらない展開や成り行きが待っていたりするから面白い

今、気になっているのは
父が昔住んでいた岩手の宮古で、
私は先輩の連絡を待っている


吐き出した言葉を、以下五分の一の手紙にまとめてみました。


「ただいま、お父さん!」

お父さんへ、お元気ですか?
いつも空の上から見ていてくれることと思います。
心配をかけることもあるとは思いますが、私は元気にやっています。
今年の春分に帰って来た二年ぶりの日本。
まだ寒さの残る日本の風は、アフリカ帰りの素足には堪えました。
母は元気です。
二年ぶりに会ったら奇麗なOLに若返っていて、驚きました。
りょうくんは、お隣の地区の小学校教諭になりました。
ハルは、社会人一年目で奮闘しているようです。

今年の秋分は七回忌を迎えます。
ガンとみんなで闘った怒濤の十ヶ月間、あれからの私の人生、
お酒を一緒に飲みながら報告したいことが、山盛りです!

まずは、大学を無事卒業してね、銀行に就職したの!
丸の内OLだったからね、浅草生まれの下町っこだったお父さんと、
東京の話をもっとしたかったなぁ。
でもね、私、仕事を辞めてアフリカに行く事にしたの。
選んだお仕事はガーナの村落開発。JICAの青年海外協力隊。
笑っちゃうでしょ?
毎日化粧してヒール履いて通勤してた私が、アフリカでボランティアだよ?
毎日バイクに股がって、化粧もせずに泥だらけになって子供と遊んで、おじさん達と畑で植林活動やったり、おばちゃん達と寝食を共にして石鹸作りしたり。バケツ一杯で身体を洗えようになったし!ご飯はいっつも現地食!停電の夜の星空に浮かぶ、瞬く星、天の川、夜道を照らす満月、それはそれは綺麗なんだよ!

私、二年ぶりに日本に帰って来て思った。
最低限の身の回りのものがあればいい。
苦楽を共にする友と、
いつでも受け入れてくれる家族みたいな存在があれば、
人は笑って幸せに、生きて行ける。

お父さんの最後の言葉
「子供が三人いてよかった」
私も思うよ
「お父さんの子に生まれてよかった!」
あなたが父だったから、今の私がある
心からありがとう

コメント

Artist HAL_ さんの投稿…
徒然なる思いが伝わってきて、素敵な文章ですね。
SHOKOLA さんの投稿…
ありがとうございます!
精進します!

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